”ラストの捩れ”とはつま先部を正しく接地させた状態で、ヒールシート部が水平になっていないことを指します。
ヒールシートの中心線に対称のエッジの高さが等しくない(パラメータ「i」が0でない)ことになり、
ヒールのトップリフトが水平な床面に平らに接しないことになります。
ある人は、捩れのあるラストは間違いと思うかもしれません。
しかし以下の理由で捩れ角(AngleRollHeelsheet:i)は必要なケースがあります。
ラストとヒールを組み合わせたものを、図2aのヒールの中心線方向から見た図では、ヒールはますっぐ立っていますが、図2bの靴の中心線方向から見た図ではトップリフトが中心より外側に外れているのが分かります。
図3cのような角度で見れば、バランスの不備がより明確に見えます。
歩行時に踵の重心をトップリフトが支えていなければ歩行時に足の負担が増しますし、靴の変形にも繋がります。
やはり靴は人が片足でも立てるようなバランスが必要と考えられます。
この現象はヒールシート部の振り角によるものですが、ヒールが高いほど、セットインの大きいほど顕著になります。
この問題を解消するためには、ヒールシートをロールさせトップリフトが靴の中心線と重なることが必要となります。
図4aのヒールの中心線方向から見た図では、ヒールは傾いていますが、図4bや図4cのように、靴としての安定感は改善されます。
DDLの既成モデルでは組み合わせるヒールの型番が決まっていないため、想定される範囲で最小限の捩れ角を持たせています。
ただし今使われているラストがすべて間違っているわけではありません。
ラストモデルを制作するとき、モデリストはヒールをラストに合わせて、図2-bの角度で見ながら調整していれば意識しなくても自然に捩れ角を設けています。
ヒールカーブもヒールアップに伴いロールさせた方が足の形の変化に適合します。
DDLの既成モデルは「AngleRollHeelcurve」は「AngleRollHeelsheet」と同じ値に設定してあります。
この2つは直接関係はありませんので、同じ数値にする必要はないことは記しておきます。